IBM THINK 2018 レビュー:Dominoアプリケーション on iPad
IBM THINK 2018イベントが3月19~22日ラスベガスで開催されたので参加してきました。
去年まではC&TSブランド(コラボレーション&タレントソリューションズ事業部)はLotusphere, IBM Connectと名前を変え単独でイベントを行ってきましたが今年からIBMの全てのブランドのイベントであるIBM THINKにマージされる形で開催されました。
そんな中、Notes/Domino関連の新しい発表でひと際インパクトの大きかった「Dominoアプリケーション on iPad」に関して得た情報を記事にしてみたいと思います。
実際に現地でiPadで動くNotesアプリを体験することが出来ました。(こちらの動画をご覧ください)
自分が参加したセッションでは実に4つのセッションでDominoアプリケーション on iPadが紹介され、その中でも「Domino Top-Secret and Domino Full-Stack Development」ラボでは実際にIBM, HCLの開発者たちとiPadのDominoアプリケーションに対する疑問をその場で検証し、なにが出来て何が出来ないかを一緒に確認するという実験的なアプローチがおこなわれました。
実際にラボのスピーカーであるAndrew Davis(IBM→HCL)が「このアプリをクラッシュさせる次の質問は?」と参加者に質問を投げかけていたのは面白かったです。本当に開発者、参加者が共にこの新しい発表をエキサイティングに捉えていて、みんなで楽しんでいることが分かる時間でした。
そんなDomino Apps on iPadに関して発表された情報を箇条書きにします。
- App Storeを通じてiPadにネイティブアプリケーションとしてインストールして使用
- 1つのIDと1つのDomino Serverへの接続のみが可能
- ID Vaultの設定が必須
- オフラインでの利用が可能(オンラインになって複製をするということが可能)
- iPadのアプリはノーツポート(NRPC、1352)で通信を行う
- LotusScriptがそのまま動く
- 複雑なフォームやロジックもそのまま動作可能
- Notes/Dominoが持つ暗号化、セキュリティをそのままiPadで利用可能
やはり、一番の驚きはLotusscriptがそのまま動くというところだと思います。ノーツポートで動作するアプリということからも今回IBMはNotesクライアントのアプリケーションが動作するプラットフォームをiPad上へごっそり移植することに成功した、というイメージにとらえています。ただAndrewは別のセッションでiPadで動作させるために表示をそのままではなくスペースを設けるなど手を加える必要があった、と説明をしていましたし、実際iPhoneでのアプリの開発はiPadよりも難易度が上がるようです。
さらにラボなど個人的に得た情報では
- フォームに記述されたJavaScriptは動作しない(Appleはアプリ上でJSを動作させることを許可していないことにも起因)
- XPiNC(XPages in Notes Client)は動作しない
- iOSのネイティブコントロールである日付ピッカーなどへの対応はまだ開発中
- タッチジェスチャーにも対応したい
- カメラやファイル連携などデバイスへのアクセスに対応したい
- GPSやコンパス、ライトセンサーなどにアクセス可能になるようLotusScriptを拡張したい
- Designer V10ではiOSであることを判断できる関数(?)をサポートしたい
- iPadの次はiPhone, 次のチャレンジはAndroid
- Android版の開発も進んでいるがWebGL(WEBASSEMBLY)というテクノロジー等を導入しなければならないかも
- WebGL(WEBASSEMBLY)での実装の先にはブラウザで動作させるという展望もあり得る
- フォーム上で右クリックでコンテキスト表示などにも対応(長押し)、(ただ現段階では操作性が良いとは言えなかった)
- リッチテキストフィールドにテーブル新規作成はまだ出来ないけど、コピペはできた
- リッチテキストの文字の装飾などは出来た
- リッチテキストに絵文字も追加出来た
- ダイアログ表示等、多言語へのサポートはまだ出来ていない点が散見された
- ハイパーリンクの追加も出来た
- 右クリック - コンテキストメニューからスペルチェックは動作しない
- 全文検索も動く
- ECLダイアログ表示や相互認証の警告なども再現
Domino Apps on iPadに触れてみた感想
ラボで開発者と使い倒しをしてみたり、実際に触れてみて感じた感想は、現時点でそれなりに良い出来に仕上がっていると感じました。動作が不安定になり再起動させることはありましたがクラッシュするような場面には今回遭遇しませんでした。
今回の発表が幾多ものノーツアプリを抱える企業にとって朗報になることは間違いないでしょう。これによってノーツアプリのWEB化が急速に萎んでしまうとは考えていませんし、ノーツのWEB化を推進してきた弊社としても今回の発表を歓迎しています。それはなによりエンドユーザーがノーツアプリの塩漬け状態から脱する機会となる、そんな選択肢が増えることはいいことですし、それによりNotes/Dominoを使い続けるユーザーが増えてくれることを期待するばかりです。
ただ、懸念を上げるとすれば、「ノーツの見た目は古い」と言う勢力がまた現れないか、ということです。弊社は新しいWEBテクノロジーを駆使してノーツアプリを刷新することを得意としてきました。そうすることで微力ながら「ノーツの見た目は古い」という誤解をもつ人たちが少しずつ減るよう努力してきました。
自分はアプリケーションのモダナイゼーションは必ずしもアプリケーションをWEB化することだとは考えていません。これからの時代、アプリケーションのExtensibility(拡張性)がよりビジネスを加速させるために必要不可欠になってきます。そのためにMicroserviceであったり、Dockerなどの仮想化技術がどんどんアプリケーションの疎結合を後押ししています。
Domino Apps on iPadを検討する場合にも、10年まえのアプリをただそのまま動かすのではなく、是非「見た目をよくする」、「アプリを拡張、成長させる」ということへの投資を惜しまないで頂きたいと思います。
IBM THINKフィードバックセッション 行います
「Domino Top-Secret and Domino Full-Stack Development」ラボへの参加者は日本人からは自分ひとりだったので恐らく現時点でここまで細かな内容を知っている日本人はあまりいないのではないかと思います(笑)、さらに夜に開発者と酒を飲み交わしながらDomino Apps on iPadの誕生秘話なんかも聞けたりして面白かったです。
よりDomino apps on iPadに関して興味がある場合は、2018年4月20日にIBM箱崎本社で開催されるテクてく Lotus 技術者夜会へ参加してみてください。私も含めてIBM THINKのフィードバックセッションをゆる~く行う予定となっています。 さらにDomino Full-Stack DevelopmentとしてDomino Node.jsに関する最新情報もお伝えする予定です。
申し込みはこちらから → https://www.ibm.com/developerworks/jp/offers/events/techtech/#com