Notes/Dominoは時代遅れではない理由!安易な気持ちで移行するのは危険

1989年にグループウェアとして販売が開始されたNotes/Dominoは、かつて一世を風靡しました。

しかし、近年では一部の声として「Notes/Dominoは時代遅れ」と見なされることがあり、さらにはベンダー企業から「脱ノーツ」などといったフレーズで他社製品への移行を勧められることもあるのではないでしょうか。

もちろん、他社製品への移行を完全に否定するものではありません。

しかし、十分な検討を行わずに安易に移行を決断することは、かえってリスクを伴う可能性があります。

そもそも、本当にNotes/Dominoは時代遅れなのでしょうか?また、なぜそのように言われるのかを正しく理解することが重要です。

今回は、ノーツコンソーシアムの団体に参加している弊社が、「Notes/Dominoは時代遅れではない」と考える理由について解説いたします。正しい情報に基づいた判断をサポートする一助となれば幸いです。

Notes/Dominoは時代遅れ?

Notes/Dominoには長い歴史があります。

 

● 1989年: Lotus Development社によりLotus Notes/Dominoが販売開始
● 1995年: IBM社がLotus社を買収し、「IBM Notes/Domino」として提供開始
● 2019年: HCL Technologies社がNotes/Dominoブランドを買収

 

IBM社がNotes/Dominoを提供していた頃まで、クラウドに非対応であったり、競合製品と比較して劣勢に立たされたことがありました。

この時期にkintone、Microsoft 365、Google Workspaceなどが登場し、それに伴い「Notes/Dominoは時代遅れ」という印象が広まったのも事実です。

しかし、2019年にHCL Technologies社へ移行して以降、Notes/Dominoは飛躍的に進化を遂げています。継続的なバージョンアップにより、モバイルアプリ、クラウド対応などが実現され、競合他社製品に引けを取らない機能が充実しています。

これらのアップデート内容を知れば、Notes/Dominoが「時代遅れ」という見方が誤りであることに気付いていただけるはずです。

Notes/Dominoは時代遅れと誤解される原因

Notes/Dominoは時代遅れと誤解される原因を5つ挙げてみます。

プロモーションが弱い

Notes/Dominoが「時代遅れ」と誤解される主な原因は、プロモーションの弱さにあります。

HCL社はNotes/Dominoのバージョンアップを積極的に行い、製品の進化を続けています。

しかしながら、プロモーション活動が十分であるとは言えず、その結果、最新情報がユーザーに届いていないのが現状です。

一方、グループウェアの競合製品であるkintone、Microsoft 365、Google Workspaceなどは、大規模なコマーシャルや広告キャンペーンを積極的に展開しています。これにより、これらの製品は市場での存在感を高め、広く認知されています。

対照的に、Notes/Dominoは十分なプロモーションが行われていないため、最新の機能やアップデート情報が多くのユーザーに届かず、その存在が埋もれてしまっている状況です。この情報不足が、「Notes/Dominoは時代遅れの製品である」という誤ったイメージを助長しています。

正しい情報が広く共有されれば、Notes/Dominoが競合製品に匹敵する先進的な機能を備えていることを、多くのユーザーに理解していただけるはずです。

最新情報が届いていない

Notes/Dominoが「時代遅れ」と誤解される背景には、最新情報の発信不足も大きな要因として挙げられます。

現状、既存ユーザーに対してリリース情報やアップデート内容が十分に発信されておらず、その結果、製品の進化が認知されず、古いイメージが払拭されていません。

一方、競合製品は、新機能の紹介や成功事例を積極的に発信し、市場における存在感を高めています。それに対して、Notes/Dominoは情報発信が乏しいため、過去の製品であると誤解されてしまう状況が続いています。

効果的な情報発信と最新機能の紹介が行われれば、Notes/Dominoが現在でも競争力のある製品であることを、より多くのユーザーに知っていただけるでしょう。

アプリの他システム間連携が乏しかった

以前はアプリの他システム間連携が乏しかったことが挙げられます。

競合他社のクラウド製品がAPIを活用してシステム連携を実現していたのに対し、オンプレミスでの利用が前提となっていたDominoサーバーでは、REST APIによる他システム連携が難しい状況が続いていました。

しかし、近年のアップデートによりシステム連携機能は大幅に改善されており、こうした過去のイメージは現在のNotes/Dominoには当てはまりません。

モバイルアプリやクラウド対応に遅れた

Notes/Dominoが時代遅れと誤解されるもう一つの要因は、モバイルアプリやクラウド対応の遅れです。

クラウドサービスの普及が加速する中で、競合製品であるMicrosoft 365やGoogle Workspaceは、早い段階からモバイルアプリとクラウド利用を前提としたサービスを提供し、オフィスだけでなく自宅や外出先からも仕事ができる柔軟な環境を実現しました。

一方、Notes/Dominoはこの対応が後手に回り、ビジネス機会を逃してしまったのは紛れもない事実です。

しかし、HCL社への移行後はモバイルアプリへの対応やクラウド対応が大幅に改善され、現在では競合製品に劣らない柔軟性を備えています。この点を正しく理解することで、Notes/Dominoの進化を再評価できるでしょう。

PCにセットアップして配布する必要があった

IBM社が提供していたNotesクライアントは、PCにインストールしてセットアップする必要がありました。

 

一方、kintone、Microsoft 365、Google Workspaceなどの競合製品は、モバイルアプリやブラウザベースでの利用を前提としており、ユーザーの負担を大幅に軽減しました。この違いにより、Notes/Dominoは「手間がかかる」という印象を持たれることが多かったのです。

 

特に、従業員の入社時などにセットアップ作業が負担となり、「扱いにくい」と感じた経験を持つ管理者も少なくありません。しかし、現在ではブラウザベースの利用やクラウド対応、セットアッププロセスが大幅に改善されています。

Notes/Domino販売するHCL社とは

HCL Technologies社は世界60カ国に従業員224,000人以上抱えるインドのIT企業です。2023年の売上高は約約131億ドル(約2兆700億円)で規模は非常に大きいです。

従来からエンジニアリング、クラウド、AIを得意分野としており、近年AIブームが到来して非常に有利なポジションにいます。「2024 Brand Finance Global 500 and IT Services Top 25 Report」では、最も急成長しているIT企業に選出されました。

HCL社はNotes/Dominoを買収後、さまざまなバージョンアップをしています。

Notes/Dominoバージョンアップ内容

HCL社はNotes/Dominoを買収後、さまざまなバージョンアップをしており、他社に引けを取らない製品となりました。
ここでは、Notes/Dominoバージョンアップ内容をご紹介します。

モバイルアプリが登場した

HCL社は、Notes/DominoのモバイルアプリであるNomadを開発しました。

このアプリにより、PCだけでなく、モバイルデバイスやタブレット(iPhone、iPad、Android)でもNotes/Dominoを利用できるようになりました。これにより、外出先や自宅でもメールやアプリを活用することが可能となり、より柔軟な働き方を支援します。

さらに、追加ライセンスは不要のため、コスト面でも安心して導入できます。

クラウドやモバイル対応で出遅れた印象があったNotes/Dominoですが、現在では他社製品と同等にスマートフォンからの利用が可能です。

配布作業が必須ではなくなった

従来のNotes/Dominoは、インストールやセットアップ作業、そしてPCの配布が必須であったため、従業員の入社時に大きな負担がかかっていました。

しかし、NomadやNomad Webが登場したことで、手間のかかるインストール作業は不要になりました。

ユーザーはアプリをインストールし、ログインしてパスワードを設定するだけで利用を開始できます。

ローコード開発環境の提供を開始した

Notes/Dominoは単なるグループウェアに留まらず、アプリ開発環境を提供しており、多くの企業から支持を得ています。

従来は独自言語を用いてアプリ開発を行う必要があり、これが技術者不足の一因ともなっていました。しかし、HCL社はDomino Leapと呼ばれるローコード/ノーコード開発環境を導入。これにより、開発言語としてJavaScriptが採用され、アプリ開発がより容易になりました。

ITやプログラミングの専門家でなくても、Excelデータを読み込むだけでアプリを構築することが可能となり、非エンジニアでも効率的にアプリ開発を進められる環境が整っています。

サーバー環境がクラウドネイティブ化した

従来のNotes/Dominoはオンプレミスサーバーでの利用が前提となっていましたが、現在ではDockerイメージを利用したDominoサーバーが提供されており、AWSやAzureといったIaaS環境への移行が可能です。

またMSPと呼ばれるHCL社より委任されたビジネスパートナーによるDominoクラウドの利用が可能です。

これにより、お客様のご要望に応じた柔軟なサーバー環境を選択できるようになり、クラウドネイティブな運用が実現しました。

クラウド環境への対応によって、これまで以上にスケーラブルで効率的な運用が可能となっています。

非互換による問題がほとんどない

以前のNotes/Dominoでは、バージョンアップ時にアプリケーションの互換性チェックが必要であり、これが運用面の負担となっていました。

しかし、Notes/Domino 9.0以降では、非互換による問題がほとんど発生していません。

これにより、バージョンアップ後にアプリが利用できなくなるといった不安を抱える必要がほぼなくなり、安心して最新バージョンへ移行できるようになりました。

Note/Dominoは時代遅れと判断するのは危険

Notes/Dominoは、いくつかの理由から「時代遅れ」と言われることがあります。

しかし、HCL社は継続的にNotes/Dominoのバージョンアップを行い、現在では他社製品と肩を並べる、もしくはそれ以上の機能を持つ製品へと進化しています。

特に、Notes/Domino独自のアプリ開発機能を活用すれば、業務効率化を実現することが可能です。

一方で、Notes/Dominoを「時代遅れ」と判断して他社製品に移行する際には注意が必要です。移行には莫大な費用がかかるだけでなく、使い勝手が変わることで業務が停滞するリスクがあります。

さらに、Notes/Dominoでは簡単に開発・運用できていた業務アプリを、他社製品に移行するとグループウェアや複数のSaaSを導入する必要があり、結果としてランニングコストが上昇するケースも少なくありません。

そのため、移行を検討する際には、まずNotes/Dominoに精通した専門家のアドバイスを受けることが重要です。

まとめ

Notes/Dominoは、1989年に登場したグループウェア製品です。単なるグループウェアとしての機能に留まらず、業務アプリの開発ができる点が大きな強みです。

ただし、他社製品と比較してモバイルアプリやクラウド対応が遅れたこと、そしてHCL社が継続的なバージョンアップを行っているにもかかわらず、十分なプロモーションが行われていないことが、「時代遅れ」と誤解される一因となっています。

しかし、Notes/Dominoを安易に「時代遅れ」と判断し移行することは危険です。企業の状況によっては、引き続きNotes/Dominoを活用した方がコストや業務効率の面で優れている場合も多くあります。

移行を検討する際には、必ず専門家に相談し、慎重に検討を進めてください。弊社では、無料相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。